大正製薬、発毛成分「ミノキシジル」に新たな作用メカニズムを発見

大正製薬株式会社(上原 茂社長)は、発毛成分であるミノキシジルに『新規の作用メカニズム』を発見。第1回国際研究皮膚科学会(ISID2023)※1にて発表した。

ミノキシジルは発毛効果が認められた有効成分として薄毛治療に用いられ、日本のみならず世界各国で使用されている。しかしながら、そのメカニズムには未知の部分もあり、さまざまな研究が進められている。同社は日本におけるミノキシジル研究のパイオニアとして38年余り、研究に取り組んできた。この度、神戸学院大学大学院薬学研究科の水谷健一特命教授と共同研究を実施する中で、ミノキシジルの新たな作用メカニズムを明らかにし、本知見を国際研究皮膚科学会で発表した。

研究成果①:ミノキシジルによる毛包周囲での毛細血管増加の可視化に成功
研究成果②:ミノキシジルは血管細胞に直接作用していることを確認

皮膚の血管は加齢とともに減少する。その結果、栄養や酸素が届きにくくなることが、薄毛の原因の一つと考えられている。本研究により、ミノキシジルが毛包の毛細血管を増加させることが明らかとなり、ミノキシジルの発毛メカニズムの解明がまた一歩前進した。
同社は引き続きミノキシジルのさらなるメカニズムの解明に取り組んでいくという。

※1:国際研究皮膚科学会
米国・欧州・日本の研究皮膚科学会の合同研究会であり、世界中の皮膚科医や研究者が集まり、皮膚科学の質の向上と研究発表を目的とした国際会議

【研究成果①】ミノキシジル塗布による毛細血管増加の「可視化」に成功
 血管はあらゆる組織・細胞に栄養や酸素を供給する重要な器官であり、毛包の成長においても極めて重要な役割を担っていることから、発毛成分であるミノキシジルの皮膚血管網に及ぼす影響を検証しました。
血管を可視化できる遺伝子改変マウスに5%ミノキシジルを約1か月間塗布し、皮膚血管の状態を顕微鏡下で観察しました。その結果、ミノキシジル塗布により、毛包周囲の毛細血管が増加しており、特に毛を作り出す司令塔とされ様々な発毛因子を分泌する毛乳頭細胞近傍の毛細血管密度が顕著に増加することが明らかになりました。(図1)
また、毛の材料を作り出す大もとの細胞である毛包幹細胞が存在する、毛包バルジ領域周囲の毛細血管密度も増加し、毛包幹細胞に接触する毛細血管の割合も増加することを確認しました。これらのことから、ミノキシジルは血管を介して、毛包の幹細胞に影響を及ぼすという新規のメカニズムが示唆されました。

図1.ミノキシジル塗布による毛包周囲の血管の増加

※2:VEGFR1
血管内皮成長因子(VEGF)のシグナルを細胞内に伝達する受容体で、血管細胞に存在しています。このシグナルは、毛細血管の増加に重要な役割を担っています。

【研究成果②】ミノキシジルは血管細胞に直接作用していることを確認
次に、ミノキシジルによる毛細血管の増加のメカニズムを解明するために、培養細胞を用いて検討を行いました。ヒト血管細胞を特殊なゲル上で培養すると、血管網を形成しますが、ミノキシジルを添加すると、血管網の形成が顕著に促進されることを確認いたしました。(図2)
このことから、ミノキシジルは血管の細胞へダイレクトに作用し、皮膚内部の血管網に影響を及ぼすことが示唆されました。

図2.ミノキシジル添加による血管網形成の促進

 


その他、大正製薬の研究成果については、大正製薬 研究開発サイト(https://www.taisho.co.jp/business/research/)でも確認できる。