【インタビュー】特別企画「株式会社リクルートが目指すマッチング」クラウド型予約管理システム『SALON BOARD』開発秘話<後編>

集客の最大化 × 業務効率UP
クラウド型予約管理システム『SALON BOARD』

徹底した業務支援から質の向上に

サロンが成すべきことに集中できることで、お客さまがより良いサービスを享受できる。
それが目指すべきマッチング

株式会社リクルート(北村吉弘代表取締役社長)が運営する、国内最大級のヘアサロン・リラク&ビューティーサロンの検索・予約サービス『ホットペッパービューティー』。クーポン集客というイメージが先行しているかもしれないが、実は裏側で業務支援に注力。クラウド型予約管理システム『SALON BOARD(サロンボード)』を提供している。
同システムは2021年7月、新機能の提供も開始するなど、さらなる進化を遂げているが、サロンにとってDX化に向けた有効なツールとなる。
そこで入社当時から『SALON BOARD』立ち上げに携わり、現在は『SALON BOARD』企画グループのマネジャーを務める長尾美樹さん(プロダクトデザイン室 ビューティークライアントソリューショングループ マネジャー)にインタビュー。機能はもとより、どのような想いが込められているのかをお話いただいた。

長尾美樹
株式会社リクルート プロダクトデザイン室
ビューティークライアントソリューショングループ
マネジャー

<前編はこちら>

【インタビュー】特別企画「株式会社リクルートが目指すマッチング」クラウド型予約管理システム『SALON BOARD』開発秘話<前編>

業務支援ツールであるからこそ

 労を惜しまず追求してきた理由。それは長尾さんが『業務を知りたい』という興味を持っていたこともあるが、とくに『SALON BOARD』が〝美容業界特化型〞の業務支援ツールだったからだろう。
 たとえばチャットツールのように単独のシーンのみカバーするものであれば、使い方を調べ環境を整えるといった具合に、使用者がある程度合わせている。しかし『SALON BOARD』はそれとは異なり、美容業界特化型のツールである。予約管理や顧客管理、DM送信など複数の業務をカバーするためには、それらを使う使用者の業務のつながり・流れの把握が必要不可欠なのだ。「業務にどれだけフィットさせられるかが非常に大切になります。ですから現場の業務をしっかりと知り、流れを把握したうえで、複数のフローがキレイに流れるような設計を目指して取り組んでいました」
 世の中には利便性の高いツールはさまざまにあり、用途や目的により複数のツールを導入することもあるだろう。しかし個々で独立していれば手間が増えるだけ。したがって、それらをつなげる人材が求められる。だからこそ企業によっては専門部署があり、担当者を配している。
 では美容室はどうかというと、現状の限られたスタッフですべての業務を行なわなければならない。であれば、なおのことスタッフの誰もが、今までと同じように使用できつつ効率化を図れること。それが業務支援というものなのだ。

クーポンをどう進化させていくか

 では2021年7月に提供を開始した新機能、『スタイリスト指定クーポン』について見ていきたい。
 開発・提供経緯を伺うと、もちろんサロンからの要望が多かったことも挙げられるが、何よりも同社が考える〝クーポンの在り方〞が関係していると話してくれる。「サロン様の集客を最大化することをつねに考えていますが、その中でクーポンという存在は非常に大切だと位置づけています」
 クーポンと一口に言っても、バリエーションが少なかったり、そのサロンにフィットしていなければ集客にはつながりづらい。やはり良い形でのクーポン活用が重要となる。であれば、どのように進化させればサロンの集客を実現できるのか。3年ほど前からこのテーマで取り組んできたそうで、第1弾として2019年に『日時限定クーポン』をリリースしている。
 そして第2弾となるのが今回の『スタイリスト指定クーポン』になるのだが、なぜ今なのか。その理由は現在、個人集客が注目されているからだと教えてくれる。
 美容室の多くは、店舗ではなくスタイリストにお客さまがつくという構造。さらに近年ではSNS集客や、フリーランス美容師の増加などもあって、個人での集客も増えている。そこでクーポンで後押ししていきたいと考えたわけだ。

写真はイメージです

あるべき姿で柔軟に

 またクーポンをより効果的にしていくために、『日時限定クーポン』との連動を可能にした。たとえば〝スタイリストの○○さんの○日○時の予約が急に空いた〞といった場合、スタイリストと日時を指定したクーポンを作成できるわけだ。そして来店履歴があるお客さまにメールを送れる『メッセージ配信』機能で、クーポンを配信するといった活用方法もできるという。
 サロンとしては当然、空きがなく予約を入れていきたいと考える。そのためにクーポンを活用するのだから、より細やかさが求められているとも言えるだろう。
 だからこそ同社では今一度、クーポンはどうあるべきかを見つめ直した結果、こうした連動を可能にしたのだ。「新人美容師さんの集客だけを目的にしていると、それだけで終わってしまいます。そうではなく、あるべき姿で柔軟に捉えて、機能の仕様を決めていく。すると最初に言われていたこと以外のニーズや使い方ができるようになりますので、お客さま(美容師/美容室)の要望によりお応えしていくことができると考えています」

2名体制でのサポート

 ただ、機能が増えることは喜ばしいが、一般的に増えれば増えるほど複雑化が懸念され、上手く活用しきれないのではないかと躊躇することもある。「その点、顧客接点を生かして、2重3重のサポート体制が敷かれていることも特徴のひとつになっています」
 ホットペッパービューティーに掲載すると同社の担当営業が伴走するが、お店ごとの戦略に合わせて『どういったクーポンを出すべきか』といった集客戦略のサポートと、新機能の告知や説明をすることが主な役割となる。『機能の使い方』まで教えることは難しいのだが、そこで電話応対が主になるが、専任のクライアントサポートグループがサポート。つまり1サロンにつき2名体制で事に当たるという。
 もちろん通常の問い合わせ窓口(ヘルプデスク)もあるが、こうして担当者がいてくれたほうが連絡しやすいというもの。したがってサロンも疑問点などを溜めづらくなるため、積極的に機能を活用していけるだろう。
 さらに待っているだけでは解決しない課題もあるため、データから気になる項目があれば、サポート担当からサロンにコミュニケーションを取っているとも教えてくれる。「実際にサロン様と接点を持つ営業がいますので、能動的にお困り事を聞いています。当社ならではだと思いますが、だからこそ、そのサロン様にフィットするところまでお伝えできているのではないでしょうか」

課題が解決しメリットが生まれるからこそ

 こうして『SALON BOARD』で、業務の効率化を図っていけるため当然、スタッフたちの業務は軽減される。するとサロンワークに集中でき、お客さまにより良いサービスを還元できることになるだろう。この世界観を構築していきたいと、長尾さんはよく話しているそうだ。
 これこそDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用して組織の変革に取り組み、新しい価値を創造してお客さまに選ばれること)と言えるのではないだろうか。
 ではサロンがDX化に取り組む際、何が必要なのか。そのように問いかけてみると、『すべての基点は課題から始まると考えている』と答えてくれる。「DX化に取り組
もうと考えて進めていくというより、業務において何が課題になっているのかを見つけることが重要。というのも、〝認識した課題を解決することで自分たちにメリットがある〞からこそ、『SALON BOARD』が使っていただけるからです。その芯を捉えることが一番大切だと考えています」


最後に長尾さんに、美容業界に対する想いを話していただいた。

目指すべきマッチング
より質高く、より良い業界に

長尾美樹
株式会社リクルート プロダクトデザイン室
ビューティークライアントソリューショングループ
マネジャー

『SALON BOARD』を立ち上げる際から標語となっていたのが『ハサミとSALON BOARDがあればサロン経営ができる』です。
 その背景には、美容師さんは本当にプロフェッショナルだと考えていることが挙げられます。技術を伸ばしてお客さまに価値を提供する。ここに重要な意味を持つ職業だと感じますから、それ以外の煩わしい業務による時間の浪費や、心理的負荷がかかることは非常に勿体ないこと。
 でしたら、われわれができるだけ周辺業務をサポートし、無駄な時間やストレスを減らしていく。そうしてサロン様のES向上につなげていただくことで、技術習得や接客により専念できれば、カスタマー(お客さま)側も良いサービスが享受できることになります。この形がわれわれが目指しているマッチング。やはりサロン様が質を向上させることが、より良い業界につながっていくと思いますので、会社組織としても、個人としても実現したいと考え取り組み続けています。
 たとえばマン・ツー・マンのサロン様であれば、インターネット予約が増えることで、電話が鳴らなくなります。お客さまとの時間の質を上げていけるでしょうし、その時間で得られた情報を顧客台帳にきちんと記しておけば、接客の質も向上していける。ですから
ツールを上手く活用していただき、お客さまとのより良い関係構築につなげていただければと思っています。


デジタル化とテクノロジー活用による
「ベストマッチング」の追求

 一人ひとりにぴったりな出会いを実現するには、それぞれの希望や状況に合った情報を、鮮度高く届ける〝仕組み〟や、自分では集めきれないような情報に触れられる〝仕掛け〟が必要。こうした考えから、私たちはデジタル化やテクノロジーの活用にもいち早く取り組んできました。
 1968年、一般的にはまだコンピュータの導入が珍しかった頃に、日本で初めてとなるIBM1130を導入し情報のデジタル化を推進。インターネット黎明期の1990年代には、世の中に先駆けて情報誌のオンライン化を開始。最新の技術を活用することで、一人ひとりの出会いの誰もが自分にぴったりのものに出会う「ベストマッチング」にこだわっています。
 近年ではクラウドやアプリなどを活用し、さまざまな企業の業務支援を展開。例えば美容室や飲食店などでは予約・決済システムを活用いただき、業務負荷を極力減らし本来のお店のコア業務に集中していただくようなサービスも生まれています。


美容業界の効率化とデータ経営を実現する『SALON BOARD』
集客の最大化 × 業務効率UP

『SALON BOARD(サロンボード)』は、美容サロン経営をサポートするクラウド型の業務支援ツールで、『ホットペッパービューティー』掲載サロンに無料で提供。
2012年6月のサービス開始から10年目を迎えた現在、ヘアサロン・エステサロン・ネイルサロンなど約10万件で利用されている。

『ホットペッパービューティー』と完全連動しており、予約管理や顧客管理・会計レジなど、美容サロンのバックオフィス業務を効率化。また、『SALON BOARD』に蓄積されたデータを簡単に集計・分析することで、集客の課題を簡単に特定でき、『ホットペッパービューティー』のページやクーポンに分析結果を反映することで、集客施策までを一気通貫でサポートしているという。

[特長]

◇24時間ネット予約
(サロンダイレクト機能/ホットペッパービューティーと予約連携)
◇予約の一元管理
◇顧客管理
◇DM(メッセージ配信)
◇レジ機能
◇集計・分析機能
◇求人(自社求人ページ作成)
◇PC・iPad・スマートフォン対応
◇安心・安全(セキュリティ対策


『SALON BOARD』3つの強み

1.リクルートの強み「顧客接点」と「徹底した現場主義」を元に開発
『SALON BOARD』は予約管理・顧客管理・DM配信など複数の業務をカバーする支援ツールのため、実際の業務の流れや業界慣習などを深く取り込んで開発する必要がある。『SALON BOARD』で生かされたのはリクルートの顧客接点。開発にあたって、1,600件を超えるクライアントのアンケートや、30 件以上のサロンでエンジニアが試作機をもって実地検証を実施。アンケートなどやツールで計測したデータ情報だけに留まらず、サロンでの実際の業務を目の当たりにしながら、実際の業務を目の当たりにしながら、ページ遷移やボタン表示一つひとつをこだわり抜いて設計。現在も使用者のリアルな声から機能追加を行なっている。

2.ホットペッパービューティー連動により、集客までを一気通貫で実行
美容業界特化型SaaSは『SALON BOARD』以外にも複数存在するが、『SALON BOARD』の強みは業界最大規模の検索・予約サイト「ホットペッパービューティ」と連動していること。『SALON BOARD』に蓄積された予約データやホットペッパービューティーの閲覧レポートをもとにボタンひとつでデータの集計・分析ができ、サロンの課題を簡単に特定。DMを配信したり、ホットペッパービューティーのページの編集・クーポン内容の変更など集客施策までを一気通貫で実施できる。

※ SaaS:「Software as a Service」の略。「サース」または「サーズ」とも。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユー
ザーが利用できるサービスのこと。

3.クライアントサポートグループ・ヘルプデスク・動画講座・営業によるフォロー体制
IT ツール導入の課題になるのが利用定着までの初期フォロー。「初期設定が分からない」など、ストレスがあれば使用には躊躇してしまう。ITツールに詳しくない場合はなおのこと。
『SALON BOARD』は、専任の「クライアントサポートグループ」が導入をサポート。その後も使用時のトラブルや不明点などは年中無休のヘルプデスクがサポートする。加えて、美容サロン経営者のための経営支援機関「ホットペッパービューティーアカデミー」では、『SALON BOARD』を効果的に使えるよう、動画講座を用意するなど万全の体制を敷いている。
さらに、『SALON BOARD』利用サロン(=ホットペッパービューティー契約サロン)には営業が伴走。集客効果検証・経営改善を手伝っている。


SALON BOARD新機能
『スタイリスト指定クーポン

 2021年7月13日より、『SALON BOARD』に新機能「スタイリスト指定クーポン」の提供が開始された。これにより、「ホットペッパービューティー」で対象となるスタイリストを指定したクーポンを簡単に設定することができるようになった。
 さらに2019年に開始した『日時限定クーポン』との併用も可能。スタイリストごとに柔軟なクーポンの設定も可能となり、「新人スタイリストの指名予約を増やしたい」「トップスタイリストなどスタイリストランクに応じた価格のクーポンを提供したい」といったニーズにも対応。スタイリスト一人ひとりの強みを生かしたクーポンの設定ができることにより、個人ブランディングを強化していける。
 当然、利用者(お客さま)にとっても、気に入ったスタイリストをお得に指名できるというメリットがある。