文化興隆の一助に『第7回きもので銀座』

 11月5日、第7回きもので銀座が開催された。主催は東京都美容生活衛生同業組合(BA東京/金内光信理事長)、東京認定美容師会(鈴木則子会長)。後援は東京美容家集団(菊玖会長)。これまで銀座散策後、宝塚や歌舞伎、劇団四季のミュージカルなどを観劇していたが、今回は原点に戻りショーステージと銀座散策で構成された。

まず東京・新橋にある第一ホテル東京で食事を楽しむと、主催者を代表して金内BA東京理事長が登壇。本イベントについて「日本古来の伝統文化である“きもの”、そして伝承技術である“着付け”。今日まで維持して、また発展させようとしているのは、まさに美容師。しっかりと誇りと使命感を持って、社会に対してPRしていく、というのが目的。みなさんのおかげで、このイベントもすっかりと定着した」と話し始める。

続けて、2020年に開催される東京オリンピックでは、BA東京がオリンピック村に入ることが決定したと報告。11月からボランティアを募集しているそうで、「約60日間の日程で、毎日10名ほどの美容師がつめなければならないが、世界に対して日本の技術が発信できる最高の場。今回のラグビーワールドカップも大変な盛り上がりみせたが、世界から評価されている日本のおもてなし、あるいは文化。“きもの”も、まさに日本の文化。世界に発信するための大きなPR材料になる」と述べる。

最後に生産性を上げていかなければ『美容業は労働環境が整わない』と言われてしまうとして、「そこで客単価を上げていかなければならないが、“着付け”も大きなメニュー。社会に発信して、“みんなできものを着よう”という習慣・文化を、われわれの力で周知させるという使命があるのではないか。そうした意味でも、このきもので銀座は、みなさんのきっかけにしていただきたい」と話した。

次いで鈴木東京認定美容師会会長は謝辞を述べると「さまざまな企画を思案しているが、その中で事業を進めていきたいと考えている。みなさまに参加していただければ」とあいさつした。

そして野沢道生氏によるショーステージ『やはりサロンワークは面白い』に移ると、まずメディアで放映されたパリ・ルーブル美術館でのヘアショーのもようがVTRで流された後、野沢氏が登壇。ヘアショーやセミナー等で多忙な毎日の中、週2~3日はサロンワークに立っているそうで、平均単価は3万円ほどになるという。もちろん、アシスタントスタッフにも手伝ってもらいながらだが、若いスタッフがイキイキと仕事ができるかが最大の課題となっているという。

さらに美容師の成り手不足という問題について、美容師の魅力をもっと伝えたいという想いがあるが、精神論だけでなく就労時間や年収などのバランスも考えなければならないとも話す。「たとえば月の半分を仕事に、残りを趣味に費やしたとする。美容師はそれでもしっかりと売上げを上げられる職業。お金や地位、名誉だけでなく、ライフスタイルを楽しく、豊かにできる仕事でもある。そうしたところからも仕事の良さを伝えていければ、業界も発展していけるのではないか」

その後、デモンストレーションに移ると2名のモデルをカット。ボブスタイルは定着した感があるが、その中でも今年は後ろに少しグラデーションが入り、前に少しだけ下がったボブスタイルがトレンドだとして、1人目はヘビーサイドを少し長めに切り、陰影をはっきりとさせていた。さらに斜めのバランスでダイヤモンドをつくったほうが小顔になるのでデザインに落とし込むのが今年流として、サロンワークでは細かいところまで説明しているとも述べる。「言葉にして伝えることもデザインの提案。またお客さまがどう見られたいか、ライフスタイルにあっているか、喜んでくれるのか。そのことしか考えていません」

かといってフィーリングだけではなく、再現性、持続性につながる、きちんとした技術を施すことも大切。そこである程度スタイリングをしながらバランスを取っていくことが、今の時代にはよいのではないかと付け加える。続けて質感カットでも髪の毛一本一本、落ちる位置を計算することが大切だとして、エフェクトカットを披露して仕上げた。

そして出張アレンジのVTRが流されると、「30年以上お付き合いさせていただいているお客さまもいらっしゃるが、毎回、何かを期待していらっしゃるはず。ですが、なあなあに流されてしまう自分もいる。その中でもお客さまの気持ちが少しでも動ければよいと自問自答しているが、それぐらい髪の毛は影響がある。その人自身ときちんと向き合うことが近道なのかと思う」と話す。

2人目のモデルもカットすると、最後に「気をつけなければならないことは、鏡に映っているところだけでなく、ライフスタイルや次の来店までにどうなるかという想像力。クリエイティブとはデザインだけでなく、その人のためを想うことが大切」と述べた。

ショーステージ終了後は、きもの姿の参加者が銀座の街を散策。道行く人たちに、日本の伝統文化である“きもの”をPRした。